『MR』読了
『MR』 久坂部 羊 著
−−−「ひどい患者がいてもやり甲斐を感じられるのは、先生が患者ファーストだからですか」
「何、それ。そんなこと、考えたこともないな」
即答だった。池野は次の言葉が見つからず、そのまま東原の前を辞した。
帰りの車の中で、池野は混乱した。東原は患者ファーストなど考えたこともないと言った。それこそほんとうの患者ファーストなのかもしれない。しかし、エリートの東原が、どうして自尊心に振りまわされることもなく、善意の医師であり続けられるのか。
またぎりぎりで赤信号に引っかかり、池野は舌打ちをした。その音ではっと気づいた。
東原はほんとうのエリートだから、自尊心に振りまわされないのだ。
そう感じて、池野はMRとしての自分を今一度、見つめ直して見ようと思った。(P115 9 患者ファースト より)
上記の部分は、この本に出てくる、数少ない「いいお医者さん」とのやりとりの部分。
今までたくさんの先生方にお世話になってきたけど、これから診察を受けるときは、その先生の後ろにはどんなMRの人たちがいるんだろう、と考えるようになるかもしれない…。