『エレジーは流れない』読了

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『エレジーは流れない』 三浦 しをん  著

−−−丸山は、怜が寿絵に話を切り出せないのは、より身近な存在だからだと言った。怜自身も、そうなのだろうと思っていた。自分のなかで、母親は、家は、寿絵であり餅湯商店街の「お土産 ほづみ」なのだと。

 でも、ちがった。自分がとうして生まれてきたのか、自分を愛してくれているのがだれなのか、真実を知ってようやく、ちがうと知ることができた。

 寿絵も、伊都子も、怜にとって等しく母親だ。そう思おうとずっと自分に言い聞かせてきたことが、言い聞かせるまでもなく、今度こそすとんと腑に落ちた。(p 185 より)

 

 高校生たちの何気ない日常が描かれ、その中にみんなそれぞれの漠然とした未来への思いが散りばめられていて、自分はどうだったかなあと振り返ったりしながら読んでいましたが、母親たちの真実が知らされてから、あっという間に感動の大波が襲いかかってくるような感覚になりました。

 母たちの愛をしっかり感じたあと、怜の視界はパッとひらけて、愛に背中を押されて力強く歩きはじめる。愛の偉大さをあらためて知る一冊だったなと思います。